介護・建築の外国人技能実習生に関する情報を発信します
2022.09.30
技能実習生の給与額は?税金はどうなる?賃金のルールを解説
技能実習生の受け入れにあたり、実際に支払う給与額はいくらが適正なのか、また税金の扱いはどうなるのかなど、賃金に関するルールをしっかり把握しておくことは無用なトラブルを防ぐうえでとても重要なことです。今回は外国人技能実習生の賃金のルールや税金の取扱いについて解説します。
外国人技能実習生の給与額の決め方や支払い方法
「外国人労働者は給料が低い」と考えていらっしゃる人がいればそれは誤りです。実は日本で働く外国人労働者は、入国1年目から労働基準法や最低賃金法、雇用保険法などの労働関係法令が日本人と同じように適用されます。もちろん技能実習生も同様です。外国人だからといって不当に賃金を安く設定することは法令違反となり、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には50万円以下の罰金が課せられることもあります。外国人技能実習生を受け入れる企業はこれらの法令を守り、適正な給与を支払う義務があります。
実際に給与額を決めるときに注意すべきポイントを解説します。
①最低賃金を守る
最低賃金は最低賃金法に基づいて国が定めているもので、労働者やその家族が最低限の生活ができる金額として設定されています。生活は土地の物価によって変動するため、就労する都道府県によって金額は異なります。たとえば東京都では時給1,113円、沖縄県では時給896円となっています(2023年10月現在)。
毎年10月1日に改定され、その金額は少しずつですが上昇傾向にあります。ですので、入社時に最低賃金に設定した給与をずっと変更していない場合には最低賃金以下になっている可能性があり、注意が必要です。また、特殊な技術が必要となる業種によっては最低賃金が割増になっていることもあります。たとえば電子機器の組み立て業、鉄鋼業、自動車小売業などがあてはまります。
「日本での給与水準は母国に比べれば高い。お互いの合意の上だったら良いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、たとえ外国人技能実習生と入国前に、お互いに合意の上で最低賃金より低い給与額で契約したとしても、その契約は無効となります。日本で働いてもらうのであれば、その地域の最低賃金以上の金額を支払わなければなりません。
②「同一労働同一賃金」の原則を守る
「同一労働同一賃金」とは、簡単にいうと雇用形態にかかわらず同じ仕事内容をしている人には同じ賃金を支払う、という考え方です。いわゆる正社員(無期雇用フルタイム労働者)と、パートタイマーや派遣労働者、有期雇用労働者などの非正規労働者との格差をなくすために導入されたもので、外国人技能実習生は有期雇用労働者に該当します。たとえば、同じ職場で同じ業務をしている既存の日本人労働者と外国人技能実習生がいるとしたら、双方に同じ賃金を支払う必要があるということです。全く同じ業務でなくても同じレベルの業務や責任を担う日本人の賃金と比べ、同程度の金額であることが求められます。
③割増賃金の支払いも必要
外国人技能実習生が休日出勤や時間外労働をした場合には、日本人と同じように割増賃金の支払いが必要です。また、技能実習生に内職をさせることは、出入国管理及び難民認定法(入管法)で認められていません。
④賞与の支払いは企業の判断
賞与については、支払い義務についての法律上の記載はないため、それぞれの受け入れ企業の判断に委ねられています。とはいえ、同じ仕事をしている日本人従業員には賞与があり、技能実習生にはない、ということは問題ですし、技能実習生の働く意欲にもかかわります。働きぶりを正当に評価したうえで、有無を判断することが大切です。
⑤給与の支払いは決まった期日に直接払い
外国人技能実習生への給与の支払い方法は、毎月1回以上、決まった期日に、受け入れ企業から直接支払います。その際、税金や社会保険、労使協定で定めた寮費や食費の実費分は賃金から控除することができます。ただし、漠然とした「管理費」など具体的な用途を明らかにできない項目については控除できません。また、監理団体への支払いなど監理に必要な費用、実習終了後に帰国する旅費などを技能実習生に負担させることも認められていません。
技能実習生の税金の取り扱い
外国人技能実習生も所得税や住民税などの税金を支払う義務があります。ただし、国家間の取り決めにより税金が免除されるケースもあります。入社時点と数年後とでは変更が生じている場合もあるため、注意が必要です。また、徴収方法は日本人と同じく給与天引きとなりますが、外国によってはそういった慣例がない場合もありますので、誤解のないように納税の仕組みや徴収方法についてあらかじめ丁寧に説明しておくことが必要です。
技能実習生の所得税
所得税については日本に住んでいるか(居住者)、住んでいないか(非居住者)によって扱いが違います。技能実習生1年目の場合には、日本に1年以上住んでいない「非居住者」の区分にあたるので、所得税に関する取り決めも非居住者に該当するものとなります。また、2年目以降の技能実習生は日本人と同じ扱いで所得税を徴収されることになります。実習を途中で辞めて帰国となった場合には、出国までに年末調整をして精算することになります。
<技能実習1年目の場合>
所得に関係なく、一律20.42%の税率で源泉徴収する
<技能実習2年目以降の場合>
「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて源泉徴収をする
年末調整によって年税額を精算する。
技能実習生の住民税(地方税)
住民税は住んでいる都道府県や市区町村が課税する税金です。所得税と同じく、非居住者と居住者によって扱いが変わります。実習1年目の実習生は非居住者となるため、住民税は非課税、つまりかかりません。2年目以降の場合には居住者の区分となるため住民税の支払いが必要です。住民税の計算方法は日本人と同じで、前年の所得から計算されます。1月31日までに給与支払報告書個人別明細書や給与支払報告書総括表を外国人技能実習生が住む市町村に提出することで住民税額が決定され、給与から天引きをすることになります。
所得税・住民税の免除について
技能実習生が租税条約を締結する国の方の場合には、所得税や住民税が免除されることがあります。免除を受けるには、所得税は源泉徴収義務者を経由して納税地の税務署へ「租税条約に関する届出書」を、住民税は各市町村へ必要書類を提出することが必要です。提出する書類は市町村によって形式が異なるので事前に確認しておきましょう。
技能実習生の賃金のルール まとめ
外国人技能実習生を受け入れるために大切な給与、税金のルールについての基本を解説しました。
今や外国人を安い給与で雇えるという誤った認識は時代遅れであり違法ですが、まだまだ労働時間や賃金支払いに関する違反が多く確認されているのも事実です。技能実習生は技能を伝える実習生であると同時に、受け入れ企業の労働環境や従業員の意識を向上させるうえでも貴重な人材です。働きを正当に評価し、適正な賃金を支払うために、制度を十分に理解するように心がけましょう。
技能実習生は一時期の企業の人材不足を補填するための要員ではなく、企業にとって貴重な人材であること、その人材をしっかりと育むことが企業にも実習生にも多くの豊かな結果をもたらせるように認識を変え、取り組んでいくことが大切です。
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